企業マネジメントを行う上で、人事制度の構築や経営理念というものが非常に重要になってきますが、その関係で関連図書を久しぶりに立て続けで読んでいます。そういった中でこの本を本屋さんで見つけました。
「面白法人カヤック」は、IT業界の人間にとって有名な企業ですが、鎌倉を拠点にウェブ、アプリの企画・開発・運用をクライアントに提供するだけでなく、自社サービスとしても行っている企業です。また、鎌倉どんぶりカフェbowlsという飲食サービスも行っています。
カヤックの自社Webサービスとしては「こえ部」「THANKS」「なかまっぷ」「うんこ演算」がありますが、一般の人にとってはなじみのあるものはGoogleのCMで流れていた「Google Chrome Music Mixer」ぐらいではないでしょうか。
このように、「面白い取り組みをやっている会社」「名前を良く聞く会社」ではあるのですが、いまいち実態が見えにくい会社ではありますので、プロモーションのうまい会社の中身を知りたいという点で興味を持ってこの本を手にとりました。
この著者によるとカヤックの「矛盾を生みだす3つの要素」は、独創的な組織づくりにある、と言い「人(誰と一緒にやるか)」「社内コミュニケーション」「オリジナリティ」をあげています。
また、メディアに取り上げられるパターンとしては自社サービスのユニークさから取り上げられるケースと、新しいタイプのベンチャーとして「つくる人を増やす」という経営理念や「さいころ給」「旅する支社」「カヤック流・360度評価」等の社内制度・人事制度が取り上げられるケースだといいます。
しかし、本全体を見て強く感じたのはカヤックは、「シリコンバレー型のベンチャー」とはアプローチが異なる、典型的な「日本型のベンチャー」だな、というところです。
これはどういうことかというと、「シリコンバレー型のベンチャー」ではFacebookやtwitter、Salesforce.com等のように「何かのサービスや製品を具現化するための会社」として立ち上がり、そのために必要な人とお金を集めて運営されて行きます。
一方の「日本型のベンチャー」である、サイバーエージェントやGREE、DeNA、楽天等は起業当初とは全く異なる事業を行っていますし、成長の過程で人とお金を集めて大きくなった印象があります。(もちろん、カカクコムやオウケイウェイヴ等、サービスを中心にしたベンチャーもあることはこの際横に置いています。)
つまり、「シリコンバレー型のベンチャー」は「目的型」が多く、「日本型のベンチャー」は「組織型」が多い、という感じでしょうか。
そうしてみるとカヤックはこの「組織型」としての成長を目指している、と見ると「経緯理念」や「KAYACスタイル」と言われる「行動指針」を重視しているのは自然なことなのでしょう。
これを頭に入れて再度この本全体を俯瞰してみると、カヤックは「組織をどう動かすか」というところに重点がおかれ、そのための工夫としての「経営理念」「行動指針」「評価制度」が構築されている、ということを何度も書いています。
この部分が「プロモーションのうまい会社」というだけではなく、この会社の強みとなっている部分なんだろう、ということが理解できる本ですが、カヤックが言っている「面白法人」という部分は「組織」ではなく「人」であり、その面白い人が集まるための「組織作り」という点に特化しているということがポイントだという風に私はこの本を読みました。
- 目次
- はじめに
- 序章 カヤックはどんな会社なのか?
- 第1章 「何をするか」より「誰とするか」
- 第2章 自分たちの「強み」を確認
- 第3章 「経営理念」を遊ぶ
- 第4章 「構造と制度」の整備
- 第5章 組織拡大とチーム運営
- 第6章 ネットワークと組織の質的変化
- 第7章 今後の課題と挑戦
- 巻末対談 経営学の視点から見たカヤックの「矛盾」
- 【コラム1】シンクタンク研究者が見たカヤック
- 【コラム2】ベンチャー・キャピタリストが見たカヤック
- 【コラム3】ベンチャー企業経営者が見たカヤック
- 【コラム4】ウェブ・クリエイターが見たカヤック
- おわりに