一昨日、「「IoT」の最前線~IoTプロダクトでヒットを生み出した3人と徹底討論!~」と題して、クラウドファンディングサービス「Makuake」と、「週刊アスキー」のスタートアップ支援プロジェクト『大江戸スタートアップ』が共催するイベントが渋谷マークシティで行われたので参加をしてきました。
IoTの概略からスタート
まず、週刊アスキー編集長代理の伊藤有氏から、「IoT(Internet of Things)」のハードウェアスタートアップ最新事情や今後のトレンドについて説明がありました。
市場規模や「IoT(Internet of Things)」と呼ばれているのがどこまでを指すのか、などの説明がありましたが、面白かったのが以下の2点。
スマートホームのDIY化
スマートホームは、当初家一軒がスマートホーム化すると思われていたが、今後DIYになって、電球のソケットに差し込んで電源をとって使えるWiFi、カメラ、LED照明になった機器などが出てくるだろう。
日用品+インターネット
また、今後のIoTは「日用品+インターネット」という単純思考が大事。
そういった考えで出てきているのが、「プランターに挿してどんな植物を植えればいいか教えてくれる製品」、「摂取量がログとして取れる哺乳瓶」、「インスリンと血糖値のログが取れる注射器」、「既存の火災報知器の電池を取り替えるだけで1秒でIoT化するIoToV電池」、「自己発電し回線内蔵、GPSロガーなどがついて、カロリー消費も測定できるIoT自転車ペダル」、「24時間、赤ちゃんの体温ログを取得し、後日医師に見せられる乳児向けIoT」、「顔認識技術を使ったフレンドリーな足跡カメラ」等がある。
クラウドファンディング「Makuake」について
次に、クラウドファンディングサービス「Makuake」を運営する、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング代表の中山亮太郎中山氏が登壇し、「Makuake」の説明と、クラウドファンディングの最新活用事例が話されました。
ここで語られたのは、商品開発に際してクラウドファンディングを実施する3つメリットです。
- テストマーケティングによってフィードバックが得られる
- 量産前に先行販売による販売実績が積める
- 販売プロモーションができる
これらを低コストで実施でき、資金調達のためにも実績を積めるという点がクラウドファンディングは有利だと。
トークセッション
最後は週間アスキー編集長代理 伊藤有氏を司会に、世界最小のスマートロック「Qrio Smart Lock」のプロジェクトを行っている西條 晋一氏、低コストなホームセキュリティ「Safie」のプロジェクトを行っている佐渡島 隆平氏、ウェアラブルプロダクト「雰囲気メガネ」のプロジェクトを行っている白鳥 啓氏に加え、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎中山氏の5人でトークセッションが行われました。
いくつかのテーマで語られたトークセッションでしたが、なぜクラウドファンディングを使ったのか、開発の苦労は、IoTの製品はWiFiにつながるものが多いが、その場合製品化にあたって技適と呼ばれる「技術基準適合証明」を取る必要があるがそれはどうしているのか、今後の海外展開について等、それぞれの会社ごとに話をまとめました。
「Qrio」
Qrio株式会社は、WiL Fund I,LPが60%、ソニーが40%を出資して作られた会社で、まず「Qrio Smart Lock」の製品化を進めています。
東洋経済ONLINE:ソニーがWiLと設立する「Qrio」の衝撃
なぜクラウドファンディングを使ったのか、という問いに対しては、ファンドやSONYからの出資でお金はあるが、「製品のフィードバックがもらえるから」。
開発の苦労としては、サムターンの形状が様々なのでまずは鍵を知ることから始め、美和ロックが国内シェア6割を握っている、というような所から勉強していった。
製品については、海外のものの殆どがドアノブを取り外したりして取り付けるものであるのに対し、ドライバーを使わずに取り付けられることを念頭に開発を進めた。
海外展開については、海外は鍵が日本とは異なる、鍵がでかくてモーターのトルクの力が足りない、といった可能性から諦めている。
「Qrio」は、遠隔で鍵を開けることはできず、鍵の情報もサーバにはない、WiFiにも接続していないので技適は取得していない。
残念な情報としては、「Qrio Smart Lock」の発売が製品改良のために3ヶ月程度延びそうだというお話でした。
「Safie」
「Safie」は、Safieはカメラとスマホで手軽に、家や店舗が見守り、防犯カメラにできる見守り・セキュリティサービスです。
なぜクラウドファンディングを使ったのか、という問いに対し「製造前マーケティングが重要という点から」。
また、「自分たちで製品を作らないIoTの会社」という風にもおっしゃっていて、実際にカメラについては他社にお任せをしているようです。
「雰囲気メガネ」
「雰囲気メガネ」はスマートフォン連動型のメガネで、フルカラーLEDライトの点滅と小型スピーカーのサウンドによって電話の着信やメールの受信、スケジュールやタイマーといったさまざまな情報を把握することができる製品です。(実際のデモもやっていただきましたが、メガネがピカピカ点滅するのには思わず笑ってしまいました。)
なぜクラウドファンディングを使ったのか、という問いに対し、「フィードバックが欲しいかった」「販売実績が欲しかった」「Makuakeはコンビニ決済ができる」。
技適については、大変は大変だが知っている人に聞けばそんなに負担ではない。
ただ、顔に触れるので海外に出すときはチェックが必要だし、FCCの申請も必要になる。
IoTは大変だが面白い
週間アスキー編集長代理 伊藤有氏が、ハードウェアスタートアップの怖さについて、資金の使い方がITベンチャーとは異なる、ノウハウがなかったり勘所がわからない、障害発生した際のトラブルシューティングが難しい、金型、納期、モーターのトルクがどれぐらいいるのかなど、わからない事だらけだと仰られていましたが、こういったナレッジの共有ができる方がいいし、皆さん聞けば教えてくれるので遠慮せずにバンバン他社に聞いていけばいい、という事も話されていました。
IoTは今後DIYになる、という事を考えるとこれからどんどん面白い物が出てくるでしょうし、そういった隙間商品から参入を始めるベンチャーも増えてくると思われます。
ただ、ITとは異なり「ものづくり」ですので既存のノウハウややり方が通用しない部分も多数あり、この辺りはメーカーで製品作りに携わって来た人の方に一日の長がありそうです。
しかし、ArduinoやRaspberryPiといったキットが出てきて、個人でも色々と面白い事ができる環境が整ってきていますので、そういった中から面白いサービスや製品を出す人も出てくることが期待されます。
IoTを考えると、「ものづくり日本」の面目躍如な場面がこれからドンドン出てきそうでワクワクしますね。