副業やフリーランスではネット銀行を開設するのがおすすめ、副業やフリーランスに便利なネット銀行 6行比較 個人向け編でネット銀行のメリットをお伝えしましたが、新規法人やベンチャーでもネット銀行で口座を開設することはメリットがあります。
しかし、ネット銀行によっては法人向けにはサービスを提供していなかったり、全国に独自の支店網がないことから、自分の口座にATMでお金を入金や出金する際にも手数料がかかるため、法人の場合には一概にネット銀行の方がお得、と言えない面もあります。
一方、EXCELで振り込みを管理して一括振込ができるなどの、ネット銀行ならでは機能も用意されています。
そこで今回は、PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)、楽天銀行(旧イーバンク)、住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行のネット銀行4行に加えて、都市銀行とで比較をしてみました。
口座維持手数料が無料
都市銀行は、新設口座やネットバンキングを使わない法人の口座は、口座維持手数料がかかるような流れとなっています。
- 三井住友銀行は、2021年4月1日以降に新規口座を開設する顧客のうち、ネットバンキングを使わない人から年1,100円(税込)の手数料を徴収。
- 三菱UFJ銀行は、2021年7月1日以降に開設され、2年以上未利用の普通預金口座については、年間1,200円(税抜)の手数料を徴収。
- りそな銀行は、2004年4月1日以降に新規に口座開設した口座を対象に、2年以上取引がない場合には、「未利用口座管理手数料」として年間1,320円(税込)の手数料を徴収。
参照:三井住友銀行:持続可能な社会の実現に向けたデジタライゼーションへの取組と各種手数料の新設および改定について(3/4)
参照:三菱UFJ銀行:未利用口座管理手数料(2021年7月以降に新たに普通預金口座を開設されるお客さま)
参照:りそな銀行:普通預金口座の未利用口座管理手数料について
一方、ネット銀行は口座維持手数料が0円となっています。
銀行名 | 口座維持手数料 |
---|---|
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | 0円 |
楽天銀行(旧イーバンク) | 0円 |
住信SBIネット銀行 | 0円 |
GMOあおぞらネット銀行 | 0円 |
ネットバンキングの利用料が無料
都市銀行や地方銀行などの普通銀行は、法人向けでは、オンライン上で振り込みや残高紹介ができるネットバンキングでは、初期費用や月額費用がかかるのところが多くなっています。
また、24時間365日利用ができないところが大半です。
三井住友銀行
三井住友銀行は、パソコンバンクWeb21のデビューとスタンダートについては、初期費用や月額費用がかかりますが、ライトタイプについては、初期費用も月額費用も無料で利用ができます。
サービス名 | バリエーション | 初期費用 | 月額費用 | |
---|---|---|---|---|
パソコンバンクWeb21 | ライト | 無料 | 無料 | |
デビュー | 無料 | 2,200円 | ||
スタンダード | 55,000円 | スタンダード | 5,500円 | |
エクスパート | 5,500円 |
ただし、パソコンバンクWeb21のライトタイプは、1日あたり300万円までの限度額や、先日付の振込が利用できない点など、一部利用が出来ない機能があります。
サービスにより利用できる時間帯が決まっており、例えば振込・振替は以下のようになっています。
- 月曜日:8時00分~24時00分
- 火~土曜日・祝日:0時00分~24時00分 (2時00分~4時00分を除く)
- 日曜日:0時00分~19時00分 (2時00分~4時00分を除く)
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行のBizSTATIONは、初期費用は無料ですが、月額費用が1,760円かかかります。
サービス名 | 契約料金 | 基本料金 |
---|---|---|
BizSTATION | 無料 | 1,760円 |
利用できる時間帯は、契約料金や基本料金が無料で利用できる24時間サービスを申し込まないと、8:00~23:55となっています。(毎月第2土曜日は21:00~翌8:00まで利用できず。)
みずほ銀行
みずほ銀行のみずほビジネスWEBは、初期費用は無料ですが、月額費用が3,300円がかかります。
サービス名 | 初期契約料 | 月間基本料金 |
---|---|---|
みずほビジネスWEB | 無料 | 3,300円 |
サービスにより利用できる時間帯が決まっており、例えば残高・入出金明細照会と振込・振替は以下のようになっています。
- 月曜日から金曜日:8時00分~23時00分
- 土曜日:8時00分~22時00分
- 日曜日:9時00分~17時00分
それに対し、ネット銀行は口座維持手数料もかかりませんし、ネットで使うのが前提ですのでネットバンキングの利用料はかかりません。
ネット銀行は無料
これに対して、ネット銀行の場合には、ネットバンキングの利用料も無料となっています。
銀行名 | ネットバンキング利用料 |
---|---|
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | 0円 |
楽天銀行(旧イーバンク) | 0円 |
住信SBIネット銀行 | 0円 |
GMOあおぞらネット銀行 | 0円 |
3つの点で比較
ここからは、ネット銀行と都市銀行を比較するにあたり、以下の3点を重点的に行いました。
- 振込手数料
- 提携ATM
- ATM手数料
振込手数料が安い
まずは、振込手数料です。
事業でつかう場合、外注費や給与など振込を行うのがメインとなりますので、振込手数料はかなり重要です。
銀行名 | 同一銀行宛 | 他の銀行宛 | ||
---|---|---|---|---|
3万円未満 | 3万円以上 | 3万円未満 | 3万円以上 | |
三井住友銀行 パソコンバンクWeb21 ライト | 無料 | 無料 | 220円 | 440円 |
三菱東京UFJ銀行 BizSTATION | 110円 | 330円 | 550円 | 770円 |
みずほ銀行 みずほビジネスWEB | 同一店内:無料 本支店宛:220円 | 同一店内:無料 本支店宛:440円 | 550円 | 770円 |
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | 55円 | 55円 | 176円 | 275円 |
楽天銀行(旧イーバンク) | 52円 | 52円 | 168円 | 262円 |
住信SBIネット銀行 | 50円 | 50円 | 160円 | 250円 |
GMOあおぞらネット銀行 | 無料 | 無料 | 166円 | 261円 |
みずほ銀行は、同一支店ではあれば振込手数料が無料であり、三井住友銀行とGMOあおぞら銀行は同一銀行であれば、振込手数料が無料になっています。
新卒で金融系の会社に入社した際、指定された銀行で口座を作るように言われたことがありましたが、社員の口座が同一銀行・同一支店で開設されていると、確かに振込手数料を削減できます。
また、他のネット銀行でも同一銀行に振り込みを行う際には、50円~55円とかなり定額に抑えられています。
さらにネット銀行は、他行に振り込む場合でも、都市銀行よりも手数料がかなり低く抑えられています。
提携ATMで引き出す必要がある
ネット銀行をメイン利用するのは、入出金をオンラインで基本的に完結させたいというのがあると思いますが、どうしても現金の入出金が発生する場合もあります。
ネット銀行のデメリットとして、必要最小限の店舗しかなく、実店舗としての支店や独自で設置したATMがありません。
この点で都市銀行と比較した場合に、ATMで現金を引き出す事がどれぐらいあるのか、また提携ATMがどれだけあるのか、というのがネット銀行を利用する上におけるポイントとなってきます。
銀行名 | 提携ATM | 内訳 |
---|---|---|
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | セブン銀行 イオン銀行 ローソン銀行 Enet 三井住友銀行 ゆうちょ銀行 | 普通銀行 2行 流通系銀行 3行 コンビニATM 1社 |
楽天銀行(旧イーバンク) | セブン銀行 イオン銀行 ローソン銀行 PatSat Enet 三菱UFJ銀行 みずほ銀行 ゆうちょ銀行 ビューアルッテ | 普通銀行 3行 流通系銀行 3行 コンビニATM 1社 駅ナカATM 2社 |
住信SBIネット銀行 | セブン銀行 イオン銀行 ローソン銀行 Enet ゆうちょ銀行 ビューアルッテ | 普通銀行 1行 流通系銀行 3行 コンビニATM 1社 駅ナカATM 1社 |
GMOあおぞらネット銀行 | セブン銀行 イオン銀行 ゆうちょ銀行 | 普通銀行 1行 流通系銀行 2行 |
またネット銀行は、独自で設置したATMがありませんので、提携ATMで入金や出金を行う際にも、ネット銀行によっては手数料が必要となります。
ネット銀行では入出金ATM手数料がかかる
ネット銀行は、自分の口座から入出金をする場合でもATMを使う場合には手数料が必要となります。
銀行名 | 入出金手数料 | ||||
---|---|---|---|---|---|
3万円未満 | 3万円以上 | ||||
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行) | セブン銀行 イオン銀行 ローソン銀行 Enet 三井住友銀行 | 毎月最初の1回:0円 毎月2回目以降:165円 | 0円 | ||
ゆうちょ銀行 | 330円 | ||||
楽天銀行(旧イーバンク) | セブン銀行 イオン銀行 PatSat | 220円 | 0円 | ||
Enet ローソンATM 三菱UFJ銀行 みずほ銀行 ゆうちょ銀行 | 275円 | 0円 | |||
ビューアルッテ | 入金は取扱いなし 出金は275円 | ||||
住信SBIネット銀行 | 110円 | 110円 | |||
GMOあおぞらネット銀行 | 通常 | 110円 | 110円 | ||
振込料金とくとく会員 | 入金:110円 出金:月5回まで0円、6回目以降 110円 |
個人が副業やフリーランスで仕事をする上では、水道光熱費や地代家賃、クレジットカードの引き落としなどが発生します。
ただし、売上とのバランスが取れている場合には入金をする必要性はあまり低いので、入金ATM手数料はあまり考えなくてもいいと思います。
出金については、出金金額を3万円以上にするとPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)や楽天銀行(旧イーバンク)は出金手数料が無料になります。
住信SBIネット銀行やGMOあおぞらネット銀行は、入金でも出金でも基本手数料が発生しますので、頻繁にATMを使うことがあるのであれば、この2行を避けた方がいいかもしれません。
ATM振込手数料は検討不要
ネット銀行は、オンラインでの振込手数料が普通銀行よりもお得です。
そのため、わざわざATMで振り込みを行う場合、提携先のATM振込手数料を支払った上に、ネット銀行の振込手数料を支払うという二重で振込手数料がかかる状態ですので、比較検討は不要だと思います。
ネット銀行ならではサービス
ネット銀行には、都市銀行などでは提供されていない、ネット銀行ならではの様々なサービスが提供されています。
複数口座の開設ができる
ネット銀行では、代表口座以外にも口座を開設できるサービスを提供しているところがあります。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、振込専用口座(入金消込(ライト))というサービス名で、追加で複数の口座開設をすることができるサービスを提供しています。
GMOあおぞらネット銀行は、複数口座・ビジネスID管理というサービス名で、代表口座1つにつき20口座まで追加で複数の口座開設をすることができるサービスを提供しています。
振込入金専用の仮想口座を開設できる
ネット銀行では、注文ごとやお客さまごとに振込入金口座を割り当てることができるサービスを提供しているところがあります。
これができると、振込のあった口座番号から振込人を特定できるので、入金照合事務や債権回収の際に大変便利です。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、ワンタイム口座(入金消込)というサービス名で、振込入金専用の仮想(バーチャル)口座を作成できるサービスを提供しています。
楽天銀行では、楽天銀行あんしん受取サービス⁄楽天銀行ジャストマッチというサービス名で、振込入金専用の仮想(バーチャル)口座を作成できるサービスを提供しており、口座の最小購入単位は1ロット(100口座以上100口座単位)から可能となっています。
GMOあおぞらネット銀行では、振込入金口座というサービス名で、振込入金専用の仮想(バーチャル)口座を作成できるサービスを提供しており、1回の口座発行での申込上限は1,000口座、1契約あたりの口座発行上限は2,000口座となっています。
リンク決済ができる
リンク決済とは、通販サイトの代金やオークションサイト落札代金等の代金回収を、専用リンクを発行することで行えるものです。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、リンク決済(決済画面接続)というサービス名で、リンクを使った決済サービスを提供しています。
楽天銀行では、楽天銀行かんたん決済というサービス名で、リンクを使った決済サービスを提供しています。
Pay-easy(ペイジー)の支払いができる
Pay-easy(ペイジー)とは、税金や公共料金・各種料金などの支払いを、金融機関の窓口やコンビニエンスストアのレジに並ぶことなく、パソコンやスマートフォン等から支払うことの出来るサービスで、Pay-easy(ペイジー)のマークがついている納付書・請求書の支払いで利用できます。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、Pay-easy(ペイジー)というサービス名で、Pay-easy(ペイジー)での支払いに対応しています。
CSVで振込処理ができる
EXCELで振り込み先と振込金額を設定する機能が、法人向けには用意されています。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、WEB総振(総合振込)というCSVで、1回につき3,000件まで、1日あたり99回まで振り込むことができるサービスを提供しています。
楽天銀行では、総合振込(WEB-FB:ファームバンキング)という全銀フォーマットまたはCSVファイルフォーマットで、1回あたり最大3,000件まで振り込むことができるサービスを提供しています。
住信SBIネット銀行では、総合振込サービスという全銀フォーマットまたはCSVファイルフォーマットで、1回あたり9,999件まで振り込むことができるサービスを提供しています。
GMOあおぞらネット銀行では、総合振込という全銀フォーマットまたはCSVファイルフォーマットで、最大9,999件の振込みをまとめて手続きできるサービスを提供しています。
APIの提供がされている
APIとは、アプリケーション・プログラミング・インターフェースの略で、APIを使う事でネット銀行の機能を使ったり、データを他のアプリケーションから読み込めたりします。
GMOあおぞらネット銀行では、API接続サービスという名称でAPIが提供されており、このAPIを使う事で、預金者の口座の振込や振替といった、預金者の資金移動が含む取引などができたり、預金者の口座残高や入出金明細といった、預金者の口座情報を参照することができます。
法人に便利なネット銀行はどこなのか?
振込手数料と提携ATM、ATM手数料、ネット銀行ならではのサービスでネット銀行を比較してきましたが、法人が使うことを想定した場合にお得なネット銀行はどこでしょうか?
振込手数料で判断する
ネット銀行は、振込手数料が都市銀行や地方銀行と比較するとかなり安いので、振込が多い企業にとっては、その部分だけでもネット銀行を利用するメリットがあります。
振込件数で判断する
また、上で取り上げた4つのネット銀行はどこもCSVで振込処理ができるので、振込件数が多い場合には、振込件数と利用回数で選択をするのもいいでしょう。
取引者数と振込入金件数で判断する
振込入金が多い企業で、企業間取引が多い場合には、取引企業毎に口座を用意した方がいいでしょうし、個人からの振込が多い場合には、振込入金専用の仮想口座を開設できる方がいいでしょう。
オンラインでできる事で判断する
オンラインでの取引が多い企業の場合には、リンク決済やAPIを使った独自処理ができる方が便利な場合もありますので、リンク決済が使えるネット銀行やAPIが使えるGMOあおぞらネット銀行が選択肢として考えられるでしょう。
必要な機能毎でネット銀行を利用する
ネット銀行は、口座維持手数料がありませんので、最初は一つのネット銀行に絞る必要はなく、複数ネット銀行で口座を開設するのがいいでしょう。
口座の開設できたら、各ネット銀行毎にできる機能が異なりますので、振込を行うためのネット銀行や、振込入金を受けるためのネット銀行、というように自社に必要な機能毎にネット銀行を使い分けていけばいいと思います。